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東京高等裁判所 昭和52年(行ケ)78号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

第四当裁判所の判断

一本願意匠は、別紙一のとおりの形状であることは当事者間に争いがなく、これによれば、本願意匠の構成は、断面ほぼ正方形状の角筒の一面長手方向中央に開口部を形成した基本形態からなり、開口部両側板のうち、一方は、内側に向つてほぼ四五度傾斜しており、他方は水平となつている態様であることが認められる。

これに対して<証拠>によれば、引用意匠は、別紙二のとおりの形状であることが認められ、これによれば、引用意匠の構成は、基本形態そのものとしては本願意匠と同じであるが、開口部両側板は、その双方がいずれも内側に向つてほぼ四五度傾斜した態様であることが認められる。

ところで、一般に意匠の類否を判断するにあたつては、意匠を全体として観察し、意匠を見る者の注意を最もひき易い部分を把握し、これを観察して一般の需要者が誤認、混同するかどうかという観点からその類否を決するのが相当である。そしてこの場合、意匠の基本形態が、一般にありふれた周知の形状である場合には、その部分は、意匠の創作部分ないし特徴ではないから、一般の需要者の注意をひくことはないといえる。

そこでこのような観点から、本願意匠と引用意匠を対比すると、前認定の両者の基本形態は、リツプミゾ形鋼として極めて普通にみられる周知のものであつて、この部分がそれほど看者の注意をひくものではないことは当事者間に争いがない。それでは、両者の基本形態以外の部分についてはどうかというと、被告は、本願意匠の開口部側板の一方が背面と水平となつている点につき、開口側板を水平とすることは、周知形態がそうであるように本願意匠のみならず極めて普通にみられるものであつて特徴がなく、それ程看者の注意をひく点ではないと主張する。なるほど本願意匠の右部分だけを切り離してみれば、その部分に限つては、ありふれた形状といえるかもしれない。しかし、意匠は、部分的な構成が他の構成部分と有機的に結合して、全体的に美感を生み出すものであるから、たとえ切離した一部分がありふれた形状であつても、他の構成部分との組合せや関連において、全体として新規な美感を形成する場合がありうる。したがつて、他の部分との組合せや関連を考慮することなしに、その部分のみを見て、看者の注意をひかないなどということはできない。

本願意匠の前記構成を見ると、本願意匠は、開口部両側板のうち一方が内側に向つてほぼ四五度傾斜し、他方が水平となつているという。左右の対称性を欠く点に特徴があると認められるのであつて、この点において、開口部両側板の双方が、いずれも内側に向つてほぼ四五度傾斜し、左右対称である引用意匠に対し、明確な識別性があるというべきである。そして両者の右のような対称性の有無は、看者の注意を最もひき易つ、両者をして別異のものとしての印象を与えると考えられるから、一般の需要者が、両者を誤認、混同するおそれはないといつてさしつかえない。

二以上によれば、本願意匠と引用意匠とは非類似であるから、両者を類似とした審決には判断の誤りがあり、違法であるから取消しを免れない。

(小堀勇 小笠原昭夫 石井彦壽)

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